【スウエーデン・静かな変革の先に何を見るか】 渡邉大使のご報告から

2013年02月27日 11:08

2月23日、帰国中の渡邉芳樹スウエーデン特命全権大使のお話を聞く機会があった。昨年、日スウエーデン議員連盟で私も訪瑞の予定でしたが、あいにく外せないスケジュールと重なり、残念におもっていたこともあり、久々にお会いした次第。旧知の皆様も参集しての講演会は、最近のスウエーデンを知るのに大変刺激的な時間となりました。

まず紹介されたのは2013年2月2-8日 エコノミスト誌。その表紙は「次のスーパーモデル なぜ世界は北欧諸国をみなければならないか。」とバイキング姿の男性が登場している。

さらに、ダボス会議に際して、「われわれは欧州における負の傾向を戻すため、引き締めと刺激の双方が必要である。投資家と消費者双方に再び支出させるため、財政再建が必要とされている。福祉システムを改革し就労インセンテイブを高めるといった構造改革が必要とされている。」とし、「スウエーデンは良い状況にある。」「またスウエーデンは高い競争力を有しており」、「中道右派政権はスウエーデンの成長の基盤となる部分の強化=インフラ、研究イノベーション,起業支援、若者就業対策にかかわる重要な投資を行った。危機における法人税率の引き下げは企業のスウエーデンへの投資に寄与し、雇用をとどめ、税収を守る。スウエーデンは責任ある、そして改革に焦点を当てた財政政策のおかげで良好なスタート地点に立っている」と、ラインフエルト首相、ボリ財務大臣、カールソン国際開発協力担当大臣連名の投稿記事(2013年1月25日DI誌)が紹介された。

福祉国家スウエーデンという国は、「国家個人主義の国」といわれるほどの「社会に対する強い信頼」と「過激なまでの個人主義」の共存のパラドックスにありながら、市場経済と個人主義への傾斜を強めながらも[スウエーデンモデル]を不変の基礎としている国と評された。なるほどと思う。高度な福祉国家スウエーデンが90年代の金融危機を乗り越え,しかも今も国際経済の激動を乗り切っていることを考えれば、「静かな改革」がEU諸国に刺激を与えていることはうなずける。スウエーデンの一人当たりGDPは世界8位、日本は17位である。

では「スウエーデンモデル」はどのように変化したのか?とりわけ2006年選挙以降の政治風景の変化、社会民主党が政権を失い、中道右派穏健党を中心とする4党連立政権下では、「低所得者に配慮した社会サービスの提供を行いつつ所得移転(現金給付)を削減し、就労促進につながる減税等を進めている」。たとえば、RUT減税(家事援助サービスを利用した場合当該費用の半額を控除),ROT減税(住宅改造をした場合も半額を控除)など。

この修正モデル(新しいモデル)の下で,スウエーデンは不平等(格差・貧困)の拡大を抑えつつ政府の効率化を進め、堅実な成長に成功しているという。しかしジニ指数は一世代前と比べ25%上昇し、格差が拡大している。つまり「中道右派はスウエーデンをアメリカに変えた」と社民党は批判している。また、移民政策に反対し排斥するスウエーデン民主党が支持率を伸ばしていることも紹介された。

社会保障に関しては年金改革・少子化対策を「卒業」し、医療・介護・子育て支援のほころび対策(対症療法)に終始していると。とはいえ、福祉国家スウエーデンと我が国との社会保障の水準の違いはしっかり認識しておくべきだろう。以前からそうだが、終末期ケアについても 「Passive Euhtanasia 自然体の死」が一般的だが、これを可能にする在宅緩和ケアが普及していることは付け加えておきたい。

興味深かったのは医療への民間参入(株式会社やファンド)である。市場自由主義型成長戦略の功罪が紹介された。つまりリスクキャピタルによる高収益吸い上げとサービスの質の低下/質の保持が指摘されている。

また高齢者ケアについても、公的財政による介護のうち50%が民間企業によって運営され、結果としてベンチャーキャピタルの手にわたることになる。本社をタックスヘーブンのケーマン諸島におく投資会社に所有されて、スウエーデンの税制から逃れているものもある。かってのコミューン直営から民間参入で様々な事象が起きている。

中道右派の政権下で変化した新たな福祉政策が、若者の失業率が23-25%と高いなか、「未来志向・次世代志向・就労第一志向の経済政策」の中で、高齢者ケアが後回し政策になっていること。結果として2002-2003年と2009-2010年を比較すると、「ホームヘルパーのみによる介護は24%から12%に減、親族家族のみが27%から31%に,親族家族とホームヘルパーが21%から32%」に変化している。そして親族介護による離職率の高くなり、年間29000人が離職、70000人が短時間労働に転換しているという。

「現在の中道右派政権下では、福祉国家の崩壊が進んでいると認識している。格差が拡大し、失業率は上昇、移民排斥の政党の台頭を招いた」とは社会民主党党首ステフファン・ロヴェーンの言葉である。

スウエーデンはこれからも目が離せない国である。

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