イギリス・デンマークの高齢者ケア視察レポートその1ーイギリスの高齢者ケアと住宅

2014年10月27日 11:22

ハイゲートナーシングホーム広い庭から居室をピーボデイの運営する高齢者住宅.低所得者用住宅ピーボデイトラストの。デイに来た高齢者と労働党党首ミルバンド、医療労働組合でスコットランドのイギリスからの独立を目指す住民投票が華々しく闘われた直後の9月下旬、久々にイギリス・デンマークの医療や介護、高齢者ケアの視察に出かけました。おりしもわが国では「医療介護改革推進法」が国会を通過、2025年、団塊の世代が後期高齢者になり、高齢者が3000万人を超す超高齢社会にむけた制度改革の最中にあります。

イギリスは、私がかって日本に制度なき時代に、訪問看護を学んで帰ってきて当時の厚生省に訪問看護を制度化と勧めたこともある”恩人”の国でもあり、これまでも、再三、医療や介護を見てきていますが、久々に訪れた次第。

ご存じのとおり、戦後まもなくからNHSと呼ばれる国民保健サービスで、「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家を構築している国です。その制度で皆保険下の医療は公平・無料で国営医療が提供されていますが、社会保障費と国家経済・高齢化などで度重なるドラステイックな「NHS改革」を政権交代のたびに続け、サッチャー政権での大ナタで医療は崩壊寸前までいったこともあります。

さて、「医療は国、福祉は自治体」の分担の中で、福祉や介護は無料ではありませんから、高齢化とともに介護の世界にも民営化が進んで来ています。高齢者の住まい=住宅と言えば、小規模なグループホームやシェルタードハウジング(管理人がいる集合住宅),アシステッドリビング(ケア付き住宅)そしてナーシングホーム(日本の特養)などが早くから整備されています。今回はロンドン市内で訪問したナーシングホームとシェルタードハウジングをご紹介します。

ロンドンの高級住宅街ハイゲートにある「ハイゲートナーシングホーム」は、200年前の尼僧院を改築したもので、写真1のように広大な美しいお庭に各居室が面しており、18歳以上の若年の障害者から高齢者まで重度な医療や看護ケアの必要な方が入居。24時間の看護介護が提供され、かかりつけのGP(家庭医)やターミナルの時にはこの地域担当の緩和ケアチームなどがくる仕組み。ここはBUPA社が経営で、(このBUPA社はイギリス最大の民間保険を販売・全国に300のナーシングホームや病院経営をする最大大手)、入居費は週に1680ポンド(1月では約120万円),ロンドンの平均が820ポンドというから高級な部類にはいる。52人の入居者の中で全額自費は16人、残りの方は市行政の福祉の措置で補助金を受けて入居。施設長・副施設長が20年以上のキャリアの看護師で、重度な脳損傷や意識障害、人工呼吸器、胃瘻など様々な医療ケアが提供されている。見かけたところ、他のナーシングホームより重度な感じがした。入院すれば週に4000ポンドはかかるので早期退院の受け皿になっている。各フロワーには看護師1人とケアフタッフ4人で対応。入居のほかにレスパイト・ショートステイ・緩和ケアなどが提供されている。

次にロンドンの下町のタワーハムレット行政区にある、比較的低所得者の入る高齢者住宅を紹介する(写真2)。ここはピーボデイ財団(27地区に5万人の住宅提供)が所有する住宅を,ノッテングヒル住宅協会にリース委託し、ケアパッケージで運営している。1960年代の低所得者住宅を高齢者(セミインデペンダント・半自立、軽い認知症等の人も)住宅として改築2年前にオープンしたシェルタードハウジングで重症になればナーシングホーム等に転居する。家賃は週に200ポンド(1月約13万2千円)。アパートなので1LDKキッチンバストイレ付で普通の住宅の広さ。スタッフは3シフトで24時間必要な人にはケアができる。投薬・食事・観察・掃除。着替えなど身辺ケアが提供される。ここのデイサービスには地域から認知症の高齢者など25-30人が毎日やってくる(写真3)。

日本の介護施設ケアと比較すると、まず居室の広さ(エキストラケアハウジングでは61㎡)、個人の尊厳が守られる空間の確保と、ケアスタッフの手厚さ、看護が24時間提供されることが大きな違いでもあります。施設は自治体運営から民営化(営利・非営利)する住宅提供となり、行政の福祉サービスによるケアの確保、自己負担と措置などの中でケアの質や施設の外部評価など様々な取り組みもまた不可欠で、このあたりは今後の我が国の課題でしょうか。

またどこでも認知症ケアが大きな比重を占めていることは同様の事であり、これについては次回報告しましょう。

さて、最後の写真は、労働党大会で労働党党首ミルバンド(若い!)の来年春の総選挙のアジェンダの発表が報じれらていました。いつの選挙もそうであるように、今回もNHS=医療が、来年春の国政選挙の争点。高額住宅への増税とタバコ増税で、NHSに働く医師・看護師等の大幅増員、医師8000人、看護師2万人増などが公約として報じられていました。

 

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