イギリス・デンマーク高齢者ケア視察レポートその2-イギリスの認知症ケア最新情報<アドミラルナース・メモリーサービス>

2014年10月28日 10:34

デメンテイアUKアドミラルナースデイメンチアUKのあるリソースロンドンのビルサウスエセックスパートナーシップ大学NHSトラスト メモリーサービスメモリーサービスの看護師ギョク氏9月末、ロンドンとその郊外で認知症ケアの最新情報を視察した。ロンドンの街中にある市民のための社会資源などの情報センター、カフェもあり、ミーテイングやカンファレンスの会議室、ボランテイア団体なども入っているこのビルに(写真2)、「デイメンテイアUK]のオフイスがある。ここで「アドミラルナース=認知症の本人と家族を支援する専門看護師」の活動をヒヤリングした。写真1はそのアドミラルナースたち。イギリスには約80万人の認知症の方がおり、近い将来100万人を超す社会的課題であることを受けて、2009年に英国政府は[認知症とともに良き生活を送るLiving well with Dementia 認知症国家戦略]を打ち立て,2014年までの5年を集中改革期間とした。早期診断、早期支援、病院での認知症対応の改善、介護施設での対応改善、ケアラー(家族などの介護者)支援の強化、向精神薬の低減を、重点目標にした17項目の政策目標を打ち立てている。関連予算も2009年で170億ポンドだったのが現在500億ポンドに増えている。

これを受けて、わが国でも民主党政権時代の2011年、厚労省の各局を横断したプロジェクトチームで認知症対策をはじめて打ち立て、「オレンジプラン」としてスタートしている。私も現職の時、この政策に厚労部門でかかわり、この政策を緒にわが国でも認知症ケアがまだ課題は多いが、一歩前も2歩も前に進んできたと実感している。

さて、今回の視察はその”検証”でもあり、特に認知症専門ナースの取り組みや早期診断集中支援チームのメモリ―サービスからは多くの示唆を得た。

【アドミラルナース】とは?

アドミラルナースAdmiral nurses とは「在宅で認知症の本人と家族が暮らすことを支援し、諸サービスをつなぐコーデイネーションをする専門トレーニングを受けた専門看護師(プレステージ)」のこと。アドミラルとは「提督」という意味。この名称は、ヨットを趣味で「アドミラル・ジョー」と愛称されていた一人の脳血管性認知症の男性をメモリーして命名されたという。はじめてのアドミラルナースは1990年ウエストミンスターで活動、現在、126名が、メモリーサービス、在宅チーム、ケアホーム、病院、終末期ケア、NPO団体、電話相談のDIRECTなどで活動中。近々200名にしたいと。視察の後にロンドン大学の研究者と話していると、「アドミラルナースはいいですよね!いい活動をしている」と称賛していた。また視察したケアラーセンター(家族などの介護者支援センター)でもアドミラルナースを1名雇用して効果を発揮しているので来年は予算を獲得して3名に増員したいと話していた。まだまだ数は少ないが期待が大きいようだ。デイメンテイアUKの活動費、年間200万ポンドの予算は75%が国のNHSから、残りは企業等の寄付で賄っている。

【メモリーサービス】とは?

メモリーサービスは、「認知症の初期診断集中支援チーム」である。新しいサービスで2009年の認知症国家戦略でスタートし5年になるが、いま、予算的にも認識でも焦点があたっているサービスだという。日本のオレンジプランでも「初期集中支援チーム」として、これに学び、取り入れている。

写真3はサウスエセックスパートナーシップ大学NHSトラストのメモリーサービスが入っている地域センター(クリニックも入っている)で、ここのメモリーサービスのマネジャーで看護師のギョクさん(写真4)に話を聞いた。このサウスエセックスNHSトラストのCCG(Clinical Commissioning Groups予算を一括して持っている)では、人口18万人で4チームが活動している(政府は4万人に1チームの割合で設置目標)。予算は150万ポンド。

視察したここのチームは「国内で唯一RCPから優良賞を受けた」というから優秀な人材が集められているようだった。チームは精神科医1名、ジュニアドクター2名、心理士1名、アシスタント心理士1名、メモリーナース2名、アシスタントナース2名、OT,PTで構成されていた。

メモリーサービスでは、GP(かかりつけの家庭医)や家族、本人、在宅サービスのスタッフなどから、「認知症ではないか?」との診断や相談依頼があれば、3日以内に家庭訪問して、まずは認知症か否かの診断をする。早期の診断、治療、そしてモニタリング、他の在宅サービスなどとの連携を図り、その認知症の人と家族がこれでやっていけるとなれば、6か月程度でこのチームは手を引き、紹介のあった元のGPに戻し、在宅サービスが継続する仕組みである。「平均すると16週/4か月くらいで終わることも多い」とはギョクさん。

いらいから3日程度で家庭訪問するというスピードには感心!いつも80人くらいをかかえているので忙しいという。「どんな治療をするのか?」という質問には、抗精神薬は使わずに認知行動療法やカウンセリング、家族支援やアルツハイマー協会との連携、在宅のサービスの導入などで症状も落ち着くという。

ここサウスエンドという地域は、海岸地域でロンドンでリタイアしたらここに住みたいという温暖な地域でしたがって高齢化率も高い。現在1867人の認知症の人がいるがその半数は診断がついていないというので、多忙という言葉にはうなずけた。

地域で早期に、初期に診断や治療とケア、家族支援をするこの専門チーム「メモリーサービス」は、日本でも政策として確実に進める必要性が高いと実感した次第。イギリスでもGPの一般的なドクターは必ずしも認知症に理解が深いとは言えず、診断や治療には我が国同様、困難があることからこのようなメモリーサービスが、地域精神保健チームとは別に専門性を高めてスタートしたという経緯はうなずけた。

 

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