イギリス・デンマーク視察レポートその5;デンマーク・ドラワー市の地域包括ケア

2014年10月29日 11:46

ビタゴーンの住宅 2インゴーンの入り口インゴーンの高齢者住宅のリビングインゴーン入居者の部屋その1.の2インゴーン施設長スザンヌさん

コペンハーゲン市内から車で約20分、対岸はスエーデンの港町で豊かな田園も広がるドラワーインゴーン  作業療法室市。人口1万4千人で、67歳以上の高齢者は2600人、高齢化率は18,6%。ちょうど我が国の厚労省が「地域包括ケアシステム」を人口1万人程度を目途の基準として整備すると表明したサイズに近い。この町で見た高齢者ケアの仕組みはまさにこの「地域包括ケア」のかたちをイメージさせるのに十分だった。

ドラワー市は2007年の行政改革時も隣のコペンハーゲン市と合併せずに、「市民の活性化」をスローガンに自立してアクテイブに暮らせる街づくりを目指している。高学歴・高収入の住民も多く、また「小さな町なので、包括的なシステムづくりができる。また市民は大抵は顔見知りで、きめ細かい支援ができ、行政の中も他のセクションとの協力も良く、行政と市民の協働も進んでいる」とは説明してくれた市の担当部長のサラさん。ちょうど,この11月から市行政は完全デジタル化するので、市民サービスセンターでは高齢者などがIT弱者にならないようにと、パソコン利用での手続きなどの支援が行われていた。デンマークのIT化は生活のあらゆるところで進んでいるなあというのが実感!

ドラワー市インゴーン 認知症ユニット廊下のバス停ドラワー市 港の風景 対岸はスエーデン マルメさて、ドラワー市では高齢者ケアシステムを三段階で進めている。まずは、一つ目の柱は「健康増進と予防」。健康で職場に長くとどまり、また介護予防もすすめる。「ビタゴーン」がその拠点で、ここにはアクテイビテイセンター、保健センター、在宅24時間ケア部門、高齢者や障害者住宅、訪問サービスのNPOなどが敷地にある。アクテイビテイセンターは住民の利用者委員会が運営している。市からの予算もあるが、全額ではなく利用料やほかの基金や寄付などで運営している。筋トレジム・金属加工・手芸・木工場・刺繍・石加工・PC講座・映画などなど65種類ものプログラムがあり、これらは70人ものボランテイアによって運営されている。ボラは利用料がタダになる。150人もの高齢者がここを利用している。朝8時のジムはいつも満員状態だという。利用者委員会のリーダーのピーターさんはコペンハーゲン市の社会福祉課などを退職後も、この役割を生きがいだと、誇りにみちていた。

第二の柱は「在宅24時間ケア」でコンセプトは「可能な限り自宅で生活を継続する」ことで、24時間の在宅ケアで約500人の高齢者を約120人の訪問看護・訪問介護・訪問リハビリのスタッフで支えている。訪問回数は1日に複数回から週数回までニーズに3シフトで対応している。各職種が個別計画で訪問していたのを、9月より看護師・社会保健アシスタント・ヘルパー・PT/OTでチーム制にして地域を3つに分けて担当するようにした。チーム制で転換したケアの特徴の一つが「リハビリ前置主義」ともいうような、「ヘルパーの支援の前にまずリハビリ」。ヘルパーが調理などを「家事援助をしてあげていた」のを、OT(作業療法士)が本人に「どのようにすれば自分でできるか」と支援し自立を促すことだという。

第三の柱は「介護拠点センタ―」で、「インゴーン」を拠点に整備した。ここには高齢者住宅(アシステッドリビング・日本でいえば特養入居のレベルの人やケアサービス付き高齢者住宅などのイメージだが、デンマークは「特養」を廃止して「住宅」として久しい)・認知症ユニット・デイセンター・リハビリセンター・ショートステイ・デイホームなどが敷地内にある。施設長のスザンヌさんは経験豊かな看護師。イギリスもそうだったが、デンマークでも高齢者施設の管理者・施設長は大体看護師である。ここの管理主体は住宅会社だが、運営は市なのでスタッフは市職員ということになる。管理部門に30人、ケア現場は約100人が働いている。アシステッドリビングは5ユニットで117戸(120人入居),入居費用は1LDKバストイレ付の広さ60ー70㎡で5652デンマーククローネ(約11万3千円)。デイホームは50人キャパで年間7000人が利用する。在宅で24時間ケアを受けていて無理な状態になればここに入居して終末期を迎える人もいる。地域への配食も毎日155人へ暖かいランチ(希望があれば夕食も)を届ける。太陽光発電の電気自動車で年間78000食を配達するという。

この三本柱で地域包括ケアをシステム化し、市全体では高齢者住宅が160戸(高齢人口の約7%)、在宅24時間ケアが約500人カバーでほぼニーズが満たしているという。我が国の同規模の町村と比較して、サービス規模もスタッフの多さも充実しているのが分かる。

しかしデンマークと言えども国家財政や経済も課題がないわけではない。高齢者増加と労働人口減少、限られた財源でいかに効率化するかは最大ミッションでもある。医療も県から市に移管されているが、入院日数短縮化で重度なリハビリの必要な患者が地域に増えている。高齢者に多い創傷ケアや心疾患、呼吸器疾患などの対応に高齢者施設と専門病院を遠隔医療でつないで、対応を進めている。また限られた財源の中でも看護師の増員と介護職のスキルアップが強調されていた(これはどの施設でも)。

わが国の地域包括ケアでも医療と介護の連携は大きな課題である。遠隔医療などのIT利用も大いに参考になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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