介護施設で「身体拘束」はゼロになったのか? 全国抑制廃止研究会調査報告から

2015年05月08日 12:55

身体拘束ゼロ介護現場などでの身体拘束や虐待の問題がニュースになると、心が痛くなる。人材不足や介護報酬引き下げと連動して、日増しに厳しくなる介護現場が目に浮かび、声なき当事者の高齢者の泣き顔が見えるようだ。

介護保険がスタートした2000年4月(平成12年)から介護施設では【身体拘束は原則禁止】とされている。2001年3月には写真のような「身体拘束ゼロへの手引き」が厚生労働省(身体拘束ゼロ作戦推進会議)から出版されて,全国の高齢者ケア現場に届けられた。

私はこの「身体拘束ゼロへの手引き」をまとめた分科会座長として作成に携わり、当時、「身体拘束ゼロ」普及のために、全国を講演で走り回ったのを思い出す。が、いつもビギナーのいる介護業界・介護現場の身体拘束の現状を見ると、まだまだこの問題には原点に返って、ケアの本質やどうすればゼロにできるかという改善方法の普及といったムーブメントと同時に、現状を放置している政府の制度整備といった政策が必要だとあらためて感じている。

今回の調査はNPO全国抑制廃止研究会が厚生労働省の委託調査研究で実施した「介護保険施設等の身体拘束廃止の取り組みや意識に関する調査研究事業」として、平成26年度に調査、27年3月発表されたものである。少し読み解いてみよう。

全国の特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、認知症グループホーム、サービス付き高齢者住宅、介護付き有料ホームなどを対象に、身体拘束の現状と取り組みを調査、9225施設から回答を得たものである。

ちなみに全国の介護保険3施設(特養・老健・療養型)には約91万人が入所・入居、グループホームやサービス付高齢者住宅、有料ホーム等を合わせると約190万人近い高齢者がそこで生活をしている。

さて、現状では全体の2,3%の施設で身体拘束が見られた。身体拘束は特養で1,5%,老健で2,1%,介護療養型で12,0%、医療療養型で12,7%,グループホームで1,8%,有料ホームで2,2%,サービス付高齢者住宅で0,8%。パーセンテージ(率)で見れば少ないような感じがするが、人数でみるとどうか?たとえば特養では入居者数は47万8千人のうち身体拘束者が7170人となる。全体の数字を合わせると59050人となり、毎日、全国で、約6万人の高齢者が身体拘束をされていることになり、その中に深刻な虐待例もあるとすれば、決して小さい数字ではないことが分かり、放置ができない。

また「虐待があったと思う」と答えた施設は8988施設のうち1500施設。いずれも1-2件と数は少ないがゼロではない。

一方、介護現場では「身体拘束ゼロの取り組みも進んではいる」。「取り組みが進み、身体拘束が減った」施設が3割、「拘束ゼロ」は58%,「不適切ケアが減った」のも53%と現場の努力も垣間見える。

しかし、8割の施設で深刻な「人材不足」が訴えられ、「職員の雇用は厳しいが何とか確保してる」施設が多く、人材派遣会社から等で埋めている実態も明らかになった。

一方、ケアを受ける高齢者の健康状況は、どの施設でも「認知症が増加」し、BPSDのような困難事例も増えている。加えて「医療処置」の増加を84%が訴え、「重度化」は6割の施設で見られた。

このミスマッチが身体拘束ゼロの取り組みにも大きく影響している。

また調査では、「施設長など組織のトップの身体拘束はしない」という理念や意識が現場に浸透している施設では、身体拘束も減少している(57%)が、「浸透していない」施設では減少率が32,8%とトップの意識が現場の取り組みに大いに関連していることを明確にしている。

さらに課題と思われたのは、施設のトップが人員体制等で、「困難と思いあきらめている」施設の53.8%で「不適切ケアや虐待が増加」していることだ。

また3施設でも療養型病床=介護療養型と医療療養型の方が,身体拘束率が高かったこと。これは医療施設(病院)での身体拘束を今後どう改善していくのという課題。またサービス付高齢者住宅でも0,8%だが、身体拘束がみられここをどのように把握指導していくのか。先般も都内の高齢者用マンションでの身体拘束が常時100人に行われ、虐待と行政から認定された”事件”があったばかりである。

貴重な調査報告だったが、今後も【高齢者の尊厳と「身体拘束ゼロ」を目指して】政治と行政の無作為にならないよう、ムーブメントを継続していかなくてはならないようだ。

 

 

 

 

 

 

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