フランスの医療と介護の最新情報その1=新しい介護制度とMAIA・ケアマネジャーの誕生

2016年01月26日 12:00

2015年11月13日、パリの同時多発テロ事件は世界中を震撼とさせましたが、その渦中のパリで市民を悼みながら、高齢者ケア・地域包括ケアシステム・高齢者住宅・在宅入院や開業看護師等の視察をしました。そのフランスの医療と介護の最新情報をお伝老人センター全景しょう。

【新しい地域包括ケアシステム=MAIAで医療と介護の連携統合】

さて、フランスの高齢者問題と言えば、2003年バカンス期間の猛暑で、約2万人の死亡者が出たことは記憶に残るが、これが現在の医療・介護、地域包括ケアシステムの改革に影響を与えたと聞く。2008年1月1日のサルコジ大統領の「Priority National国家優先事項プラン」では、がん、アルツハイマー、老年病ケア、ターミナルケア等に対して数年間の予算、研究支援、教育等を優先事項に挙げ、特に「ネットワーク」づくりにも投資がされてきた。

その改革でフランスの「新しい地域包括ケアシステムMAIA(自立分野における医療と介護の統合メソッド)」が創設され、地域の医療と介護の連携が強化されている。フランスでも従来から医療と介護は制度的カオスにあり、利用者から見て使い勝手が良くない複雑なシステムで、予算や給付も別で縦割りや連携上の課題があった。そこで60歳以上の非自立高齢者を対象に、利用者に分かりやすく、要介護者の医療と介護を統合得るシンプルな仕組みにしたのが「MAIA]。日本が先行している「ケアマネジャー職(Gestion de Cas)」を誕生させ、地域のMAIAに2―3人のケアマネジャーを配置、既存の医療と介護サービス(施設・病院・クリニック・在宅サービス事業者)の連携、支払者(医療保険と介護手当)への窓口一本化を図った。2008年の政府の第三次アルツハイマー・プランでトライアルを開始し2011年より全国展開している。2015年現在、全国に250か所(パリ市内は5か所)が設置されている。

【MAIAと地域のサービス提供機関は?】

MAIA・地域包括ケアの流れをみると、①地域全体の予算を持つ各地方の「地方健康庁ARS」が、その地域の包括ケアの事業者(パイロット・キャリア―)を公募する。②選定された事業者は予算や支払い、地域ケア等について協定を交わす。③パイロット(実施者キーパーソン・スタッフ)をフルタイムで採用し、地域包括ケアを展開していく。④具体的には、その地域のケア・リソースを測り、組織診断し、各関係機関をつなぐ窓口となり、困難事例を扱い、丁寧な解決に向けていく。

また地域の介護の担い手を見ると、日本の地域包括支援センター的な「CLIC」と呼ばれる「コーデイネションの情報の地域センター」が小地域ごとにあり、訪問看護と訪問介護を合体して提供する「SSIAD 在宅看護介護事業所」や「SAAD 家事援助・買い物等の支援事業者」、在宅医療の「HAD 在宅入院」「開業看護師」など公的・民間・NPOなどによるサービス事業者が活動している。

【フランスの介護手当】

フランスには介護保険はないが、「介護手当 APA」が要介護者に支給されている。医療保険は「疾病金庫」だが、介護手当は「CNSA 全国自立連帯金庫」が介護と障がい者の給付を行う。

介護手当の支給額は5段階の「GIR 要介護度評価」と「本人及び扶養義務者の合計所得」により計算される。2014年改定の給付月額を見ると、最重度のGIR1で1312ユーロ(約17万7000円・1ユーロ135円計算)から、軽度GIR4で562ユーロ(7万5870円)。GIR5は現物給付のみとなっている。

【議論は在宅中心に】

さて、フランスでもここ数年、介護手当では不十分だと「介護保険創設」の議論がされているが、政府は民間保険で導入の方向を崩していない。また下院を通過した「社会高齢化適応法」は、上院で議論中だが、在宅中心の議論が多く、高齢者住宅や施設は議論になっておらず、現場の施設では「ロビー活動を強めている」と話されていた。

フランスでも高齢化の進展とともに、高齢者の住まいと医療・介護のゆくえが深刻になっている昨今でもある。

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